外れ馬券は「必要経費」か? 巨額「競馬脱税事件」の判決の行方は?
巨額の「競馬脱税事件」として注目を浴びている裁判の判決が5月23日、大阪地裁で下される
「競馬で儲けた28億8000万円の一時所得を申告しなかった」——。
巨額の「競馬脱税事件」として注目を浴びている裁判の判決が5月23日、大阪地裁で下される。
週末には、競馬の祭典・日本ダービーが予定されているが、競馬ファンはこちらの結果も気になるはずだ。
報道によると、被告人の男性(39)は100万円を元手に、当たり馬券の払戻金を次々につぎ込む形で馬券を購入。自作の予想システムを駆使し、2009年までの3年間で合計約28億7000万円分の馬券を買い、トータルで約30億1000万円の払い戻しを得た。つまり、差し引きして約1億4000万円の「黒字」となった。
単純に考えると、この黒字分の約1億4000万円が「所得」であり、税金がかかるとしたら、この部分だと思うだろう。ところが、男性が確定申告しなかったために所得税法違反で起訴された際に、検察が「所得」と主張したのは、なんと28億8000万円という途方もない金額だった。
なぜかといえば、検察は「外れ馬券の購入費」を無視して、「当たり馬券の購入費」のみを「必要経費」と評価しているからだ。検察は、約30億1000万円の「払戻金」から、約1億3000万円の「当たり馬券購入費」を引いた28億8000万円を「所得」と主張し、男性が約5億7000万円を脱税したと言っている。つまり男性は「儲けた金額」をはるかに上回る税金を納めろと要求されているのだ。
競馬ファンからすれば、「外れ馬券の購入費」も含めてコストと考えるのが常識であり、「検察官は競馬をやったことがないんだろう」「もし検察の主張が通るようなら、馬券を買うのがアホらしくなる」といった声も聞かれる。
「誰に聞いたって、自分が稼いだ分の5倍もの税金を払えと言われるのは、明らかに納得できないと感じるのではないでしょうか。このような結論になるのであれば、多くの競馬ファンは、怖くて競馬を楽しめなくなるのではないかと思います。
実際に受け持つことができない額の税金の負担を強いるのは、租税制度の根底にある『担税力』(税金を負担する能力)の観点からも疑問があります。仮に、検察の主張どおりの判決が出るのであれば、今回の事件は、租税制度の根幹にかかわる重大な欠陥を露呈することになると思います」
法律論としては正しいが、常識感覚からすれば、どこかおかしい。そんな判決が出るのかどうか。それとも、裁判所が常識を働かせて、競馬ファンが納得できるような結論を示すのか。大阪地裁の判決が注目される。